電波昔話

むかーしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがすんでいました。
おじいさんは山へ密猟に、おばあさんは川へ産業廃棄物不法投棄に出かけました。

おじいさんはもう90歳でしたが、猟の腕は確かでした。
昨日も大きな朱鷺を2羽仕留めて、おばあさんと二人で朱鷺汁を作っておいしく食べました。



しかしここで問題なのはおじいさんではありません。

約10キロの産業廃棄物を背負って川に向かったおばあさんは、何とか無事に川辺に着く事が出来ました。
そして周囲に誰もいない事を確かめると、黒いゴミ袋に詰めた産業廃棄物を川に投げ捨て、そそくさと帰ろうとしました。


その時。

どんぶらこーどんぶらこー

上流の方から、やる気無さげな音とは正反対に、もの凄い勢いで大きな桃のようなものが流れてきました。
おばあさんは、意地汚いので、つい桃を受け止めようと川に身を乗り出してしまいました。

  ばしゃん





夕方になって、おじいさんが家に帰ってくると、まだおばあさんは帰っていませんでした。
「おばーさんわどーしたんかのぉ。おそいのぉ。」
仕方が無いので、おじいさんは捕まえてきたツチノコを檻に入れて、おばあさんを待つ事にしました。




十時間後。

おばあさんはまだ帰ってきません。




二日後。

おばあさんはまだ帰ってきません。






三ヶ月後。

おばあさんはやっぱり帰ってきません。
桃と一緒に、海まで流されてしまったのでしょうか。



おじいさんは、初めのうちは寂しがっていましたが、軽度の老人性痴呆症だったので、ついにはおばあさんの事を忘れてしまい、余生を一人静かに暮らしまし たとさ。




めでたし、めでたし。



<おしまい>




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