ロマネスク・るんるんなまもの



健「えーと、隣村まではあと……距離の単位がわからない……まあ、割と近いよね、これなら」

意外といい加減な健でした。






さて、ここはうららかな日射しの森の中。

次「今度こそりなの手がかりがあるといいなあ」
健「そうだね。…それにしても、ここはどこなんだろう。早く帰らなきゃ、父さんも母さんも心配してるだろうなぁ」
次「りなを見つけたらきっと帰れるさ。元気出せよ健」

健は次郎の言葉に励まされ、頬を少し赤らめて頷きます。
健「うん、そうだね。さあ、早く隣村に行こう!」





健「えーと、隣村まではあと……ていうか地図が大雑把すぎて今僕らがいる位置がわからない…」


さて、ここは大きな樹がうっそうと生い茂った森の中。太陽の光が樹に遮られて、昼間だというのにあまり明るくありません。

健「ねえ次郎、どうしようか、さっきの道まで一旦戻った方が…次郎?」

振り向くと次郎がいません。ミステリー!


健は慌てて次郎を呼びます。
健「次郎!おーい次郎!どこ行ったの?!」

その時、後ろの茂みががさがさと音を立てました。ホラー!

狼とか熊とかそういう飢えた獣類が出て来て食べられたらどうしよう、と健は青ざめました。
しかし、そこから出て来たのは狼でも熊でもよくモンスターとか言われる変な生き物でもなく、ただのうさぎでした。

健『よかった…。漫画とかゲームとかではよくある、異世界に行ったらモンスターに襲われて危ない目にあうなんて展開にならなくてほんとよかった…』

次「おーい健ー!」
健「次郎!どこ行ってたんだよ…って何でアンリさんの眼鏡かけてるの?」
次「せっかくもらったんだから装備しないと意味ないと思って!この眼鏡すごいんだぜ、かけたらよく見えるようになった!」
健「それは眼鏡なんだから当たり前…えぇ?!」

よく見ると、次郎の眼鏡にはレンズが入っていません。

健「レンズ入ってないじゃん!」
次「え?でもほんとよく見えるぜこれ。すげーなー、さすがアンリさん」


次郎はふしぎなめがねをてにいれた!



健「変だ…絶対変だ……」
次「あ、そうそう、問題は眼鏡なんかじゃないんだ」
健『その眼鏡も十分問題だと思うんだけどな…』
次「ほらこれ見てくれよ!」

そう言って次郎が健の目の高さに持ち上げたのは、とっても変な生き物でした。


健「これ、何……?枕……?」

白い楕円形の物体に、小さくて細い突起が5本ついています。よく見るとそれは足としっぽのように見えます。顔らしき場所には、つぶらな小さい黒い目が健 を見つめています。

次「枕じゃないって!これ絶対UFOだよ!」
健「UFO?ってあの、未確認飛行物体のUFO?」
次「そうそうそれ!火ぃ吹いたりビーム出したりするUFO!」

UFOについての認識が健と次郎では違っているようですが、次郎がいいたいのはやっぱり未確認飛行物体のことのようです。

健「でもこれ…未確認な物体なのはわかるけど、飛んでないからUFOじゃないだろ…」
次「なんだ、違うのかー…残念。でもまあいっか、ビーム出るし」
健『えっ、まじでビーム出るの?』

おそるおそるその未確認白い物体を見ると、一瞬にやりと笑ったように見えました。

健『こいつ絶対危険な生物だ…!!』
と健は確信しました。次郎に忠告しようとしましたが、次郎が未確認白い物体と夕日の渚を背景に仲良く追いかけっこをしているので言い出す事ができません。


次「よーし決めた!お前の名前はヴィクトリアだ!」
健「豪華な名前だね……」

ヴィクトリアと名付けられた未確認白い物体はしっぽらしきものを振って、うれしそうな様子です。

次「さあ行こうヴィクトリア!隣村まで競争だっ!」
ウ゛ィ「ふにゃら!」
健「『鳴き声も変だ…』って、次郎?その白いの連れて行くつもり?」

次郎が今にも走り出しそうな格好のまま静止しました。

次「当然!だってヴィクトリアは俺の相棒だからな!な、ヴィクトリア!」
ウ゛ィ「ふにゃらー」

健「駄目だよ。もし隣村が見つからなかったら、アンリさんにもらった食料で生き延びなきゃいけないのに、食料は僕達の分しかないんだよ」
次「ヴィクトリアはちゃんと自分で食べ物を見つけられるさ!」
ウ゛ィ「ふにゃら!」

健「そいつが変な病気とか持ってたりしたらどうするんだよ。隣村の人に怖がられたら?」
次「頼むよ健、一緒に行ってもいいだろ?」
健「だめです!飼っちゃいけません!」

その時、何かが健の顔のすぐ傍をすごい速度で通り抜け、後ろでジュッという音がしました。

健『こいつ今ビーム放った……!』

ヴィクトリアのつぶらな瞳が、「お願いです連れていってください」と訴えています。(意訳:ぐだぐだ言っとらんと連れて行かんかいボケェ)

次「なー健ー頼むよー」
健「し、しょうがないな…じゃあ、一緒に行こうか」
次「やった!健ありがとう!」

喜ぶ次郎に微笑みかけながら、健はヴィクトリアの危険性を改めて認識しました。

次「さあヴィクトリア!隣村まで競争だっ!」
ウ゛ィ「ふにゃらー!」

走って行く一人と一匹の姿を見て、健はふと重大なことに気づきました。

健「隣村ってそっちの方向であってるのか?!」








健「ところで次郎、ヴィクトリアはどこで見つけてきたの?」
次「夢の世界さ☆」
健『帰って来て次郎…!絶対その白いのに騙されてる…!』



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