ロマネスク・老 1



健「次郎、もうすぐ町に着くみたいだよ。今度こそりなが見つかるといいな…」
次「そうだな。よーし、行くぞヴィクトリア!」
ヴィ「きゅー!」
健「あっ、待ってくれよ次郎!」


どすん


??「おおぉぉ?!」
次「うわっ?!」

健「次郎?!大丈夫か?!」
次「俺は大丈夫だけど、おじいちゃんが…」
健「うわあ!おじいさん、大丈夫ですか?!」
おじいさん「ここここ腰が……」
健「腰が抜けたんですか?大変だ、次郎、すぐ病院に運ばないと!」
おじいさん「腰がぁぁ…」
次「ごめんなおじいちゃん、俺がよそ見してたから…」

おじいさん「腰が折れた…」
健「ええええ?!!」
次「やばいじゃん!!おじいちゃん病院どっち?!」
おじいさん「わしゃぁもう駄目じゃぁ…」
健「おじいさんしっかりしてください!!気を確かに!!」
おじいさん「おおぉ、ばあさんが、ばあさんがわしを呼んでおる…」
次「おじいちゃんそっち行っちゃ駄目だ!!」
おじいさん「ばあさんや…今日の晩ご飯は何かいのう…」
健「だめだ、おじいさんが別の世界に逝きかけてる…!次郎、とにかく病院を探さないと!」
次「ヴィクトリア、病院どこかわかるか?」
ヴィ「ほにゃららー」
次「そうか!よし、連れてってくれ!」
健「何でわかるのかわからんけど…頼んだぞ、ヴィクトリア!」






そして病院。おじいさんはあちらの世界へ逝かずにすみましたとさ。

健「ああ良かった…ほんと心臓に悪いよ…」
次「でもおじいちゃん何ともなくて良かったなあ。これもヴィクトリアのおかげだな、えらいぞヴィクトリア!」
ヴィ「ほにゃーらー」

健「何言ってるんだよ、次郎とヴィクトリアが前も見ずに走り出したり するからこんなことになったんだろ」
次「え、だって…なあ?」
ヴィ「ほにゃん」
次「ほらー、ヴィクトリアだってこう言ってるじゃん」
健「どう言ってるのかさっぱりわからないよ…。
  とにかく!ヴィクトリ アが危険なことしないようにしっかり見張っててくれよ。次郎は飼い主だろ?」

次「ヴィクトリアは危険なことなんかしないって!」
ヴィ「きゅー!」
健「さっきしたじゃないか」
次「あれはタイミングが悪かったんだよ」
健「あと少しタイミングが悪かったらおじいさんは死んでたかもしれないんだよ?」
ヴィ「きゅっ!」


ヴィクトリアの右ストレートが炸裂!健に68のダメージ!


次「うわぁ、どうしたんだよヴィクトリア!」
健「やっぱりこいつ危険…」

ヴィ「きゅきゅー…!」
意訳:さっきから聞いてればぐだぐだぐだぐだうるせェんだよ!

健「ひぃ!!」
次「ヴィクトリア、お腹でもすいたのか?」
ヴィ「ほにゃら?」
健「こ、こいつ……!」

健、ついに怒る。健はヴィクトリアのしっぽ(のような突起)を引っ張った。すると突然凶暴化し、暴れだすヴィクトリア!

ヴィ「ほにゃにゃらー!!」
健「うわあ?!」

ものすごい勢いで走り出し、通りを歩く人々をヴィクトリアは次々に攻撃していく。あちこちであがる悲鳴。

次「ヴィクトリア!落ち着け!」

しかも悪いことに、この町の通りを歩いている人は何故か高齢者ばかりだった。
ヴィクトリアの軽い突撃にすら次々と倒れていくおじいちゃん おばあちゃん。これは凄惨!

健「うわああ、大変だ次郎、あいつを止めないとご老人が危ない!」
次「おーい!止まれヴィクトリアー!」

逃げるご老人、追うヴィクトリア。白い悪魔は容赦なく非力な高齢者たち(平均年齢72歳)に襲いかかる。
道ばたにはヴィクトリアに攻撃されたおじいさんおばあさんがいたるところに倒れ伏し、あちこちから聞こえるうめき声はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。
次「止まれヴィクトリア、止まれったら!」
しかし何か変なスイッチが入ったヴィクトリアは主人の命令にすら耳を貸さない。疾風のように駆けてゆく白くて丸い物体。かわいらしいはずのそれは、もはや恐怖の対象でしかない。



その時、おもむろにふしぎなめがねを取り出す次郎。

健「その眼鏡は、アンリさんにもらった…!」
次「めがね☆ビーム!!」

次郎の叫びとともに、ふしぎなめがねから飛び出た白い光線がヴィクトリアに炸裂!

健「ええ?!まじで?!!」
次「待つんだヴィクトリア!」
ヴィ「ふしゅー!!」

ようやく足を止めたヴィクトリア。しかしまだ変なスイッチは入ったままのようで、次郎たちを威嚇している。

次「ヴィクトリア、目を覚ますんだ!こんなことをしたってお年寄りが苦しむだけだ!」
ヴィ「もしゃしゃー!!」
次「何を言ってるんだヴィクトリア!そんな聞き分けのない子は許しませんよ!」

何故ヴィクトリアと次郎が会話できるのか、いったいこれは何の会話なのか、さっぱりわからない健は呆然と見守るしかなかった。
そもそも、 眼鏡からビームが出せる事自体意味がわからない。健にはその意味の分からなさを突っ込むこともどうすることもできなかった。


と、その時。

ぐしゃっ
ヴィ「ふぎゅっ」


この町にはいないと思われた若い女性が颯爽と歩いてくると、有無を言わせず暴走するヴィクトリアを踏みつけた。

次「ヴィクトリア?!」

女性は混乱するヴィクトリアを持ち上げ、地面に叩き付ける。ぽよーん と愉快な音をたてて跳ねるヴィクトリア。完全に目を回して動かなくなった。

次「大丈夫かヴィクトリア!」
健「あ、あなたは一体…」

女性はハイヒールの踵を鳴らし、髪を振り払うと、次郎に向かって厳かに告げた。
女性「そこのあなた、私についてきなさい」



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